「ジャガラモガラ」 山形県天童市貫津~龍神伝説の地で地名の謎を探る。

ジャガラモガラ~天童市貫津(ぬくづ)

ジャガラモガラは、天童市の東部、奥羽山脈の西側にある標高905.5mの雨呼山(あまよばりやま)
にある東西90m、南北約250m、深さ100mの大すり鉢状窪地です。
この窪地には大雨が降っても底には水がたまることはなくて、窪地の底には直径30cmほどの風穴群があり
真夏でも摂氏3度から8度の冷風が地中からそよぎ出ています。

ジャガラモガラ断面図

すり鉢状窪地の内側にある植生は、普通の垂直分布とは全く逆で、底部に行くほど高山性の植物が
みられ、低木である。

このジャガラモガラの語源については、次の四つの説があります。

1.地形形容語源説 ジャガジャガした地形を形容したとする説。
2.姥捨語源説 姥捨伝説を語源とするというもので、泣き叫ぶ声をかき消すため、
鳴り物をジャガジャガ鳴らしたとする擬音語説。
3.アイヌ語語源説 近くにチャシ(砦)跡があり、アイヌ語ではないか、とする説。
4.じゃんがら念仏語源説 福島県いわき地方に伝わるじゃんがら念仏を語源とする説。

これらの四つの説は、論理的な説明が伴わず、いずれも決め手に欠けています。
そこで、ジャガラモガラの自然的・文化的立地条件を確認してみると、次のようなことが分かります。

天童は、内陸性気候で寡雨気候であり、干ばつが起きやすい。
雨呼山は、天童地域の水源になっており、雨乞いの場所になっている。
また、雨呼山の南山麓には、天台宗の立石寺。
北山麓には、天台宗の最上第1番礼所の若松寺がある。
そして、天台修験の場所として、回峰修行の中間地点にジャガラモガラが位置してある。

このほかに、ジャガラモガラには、次のような龍神伝説が残っています。
「むかし、ジャガラモガラには満々と水が湛えられていた。ここには龍女が住んでおり、
三熱の苦しみで成仏できずにいたが、美女に変身し、麓の観音堂で徳の高い僧の功徳により、
湖の水と諸共に、無事昇天することができた。」
そのとき
「もし、天童地域が干ばつにみまわれたら、龍神様雨たもれと唱えれば、たちまち雨を降らせましょう。」
と龍女は約束してくれました。

この伝説と全くおなじモチーフの龍女成仏の説話が、驚くことに天台宗の根本経典『法華経』の
提婆達多(だいばだった)の章にあるのです。
そして、この仏教説話の龍女の名前が沙伽羅(さがら)龍王という名です。
また、古代の葬法で霊が無事昇天するまで遺体の仮安置を行うことを
「殯(もがり)」といい、その場所を殯の宮殿といいます。
ジャガラモガラは、沙伽羅(さがら)龍王が、仏教の功徳で無事昇天した
殯(もがら)の宮殿という意味で、仏教語(サンスクリット語)で名付けられたのではないでしょうか。
立石寺には、平安時代に大阪の四天王寺から伝わり、
雨乞いの時に舞ったという沙伽羅龍王の舞楽衣装が残されています。

ジャガラモガラ 天童市貫津    ジャガラモガラ地図